「歴史が繰り返される」が本当なら、どうかマッサンのストーリーが私たちの「予報」であってほしい。
ロマンだけでは越えられない文化の壁。
情熱を「数字」という冷徹な現実に翻訳する苦しみ。
これは、夢を食い扶持に変えようともがく、ある国際結婚夫婦の、リアルな記録。

はじめまして。
高知県日高村の「醸造所の社長」こと、さきちゃんです。
私たちは今、高知でスコティッシュビール醸造所の立ち上げ真っ最中です(2026年2月現在)。
本連載『聞いてや、マッサン!』では、現在(2025年12月末~)再放送中のドラマ『マッサン』のストーリーを出発点に、今まさに進行している私たちの醸造所づくりの裏側を等身大でお届けします。
第3週のテーマは、「事業計画書」と「夫婦喧嘩」。
ワクワクしません?笑
<人物の呼称について>
マッサン:ドラマ『マッサン』に登場する亀山政春のこと。
エリー:ドラマ『マッサン』に登場する、亀山政春の妻。
竹鶴さん:竹鶴政孝。マッサンのモデルで、ニッカウヰスキー創業者。
リタさん:竹鶴リタ。竹鶴政孝を支えたスコットランド人妻。
第3週『住めば都』

(あらすじ)
予算見直しや銀行接待など、夢を数字に変える「事業計画」の現実に奔走するマッサン。しかし仕事優先の態度が災いし、エリーと大喧嘩。国際結婚の壁に弱音を吐くマッサンに、優子(相武紗季)は激怒し、エリーにはマッサンしか頼る相手がいないとたしなめる。理想を形にする責任と唯一の味方であるエリーを守り抜く覚悟を改めて誓うマッサンだった。
参考:NHKアーカイブス『マッサン』番組内容
第18回での二人の大喧嘩は、見ていて胸が痛かったです。二人ともの言い分が理解できるから、余計につらい。
頭に血が上ったマッサンの口から、こんな言葉が飛び出します。
「日本人になりたい言うたんはエリーじゃろ!」
「だったらスコットランドに帰って、スコットランド人と結婚すりゃあええじゃろが!」
ああ、マッサン。
それを言っちゃぁおしまいよ。
でも正直に言えば、私もジョンに対してそういう風に思ってしまったことがあります。
これが日本のやり方ながやき、しょうがないやん!
ジョンも私と同じようにできるようになってや!
この「同じように」という言葉は、時に恐ろしい言葉になると思います。なぜならそれは、比較して優劣をつけるということ。
ジョンに対して思ってしまったとしても、言わないように気を付けています。
※ジョンは私のブログ記事は公開後に読んでくれます。きっと今頃、これを見て「え?そんなこと思ってたの?」と思っていることでしょう。でもきっとジョンだって、スコットランド在住時代には私に対してそういう風に思ったことがあるはず。「ないよ」と言われたら、平謝りでビールを買いに出かけます。
夢を「数字」に変える苦しみ
ドラマでマッサンが書いた、あの分厚いウイスキー事業の計画書。
「日本で本物のウイスキーをつくるには、これだけの設備と時間が必要だ」と熱く語るマッサンに、経営者である住吉酒造の田中社長が突きつけた言葉は、「もっと現実的に」という厳しいものでした。
私たちも、全く同じでした。

技術屋であるジョンが語る、理想の醸造設備。それはすばらしい夢だけど、社長である私の仕事は、それを日本の銀行や行政、そして補助金の審査に通る「事業計画書」という現実的な数字に翻訳すること。
「ジョン、その設備は大きすぎるって」
「どうせ将来的にこれくらいの規模が必要になるんだから、今やればいいじゃん」
そんなやり取りを何度、繰り返したことか。
夢を形にするための設計図を書く作業は、時に情熱を冷ますような事務作業の連続ですが、これを乗り越えないと最初の一歩が踏み出せない。
100年前も今も、モノづくりのスタートラインは変わらないんだなと、マッサンの背中に私たちを重ねてしまいました。
国際結婚は、異文化サバイバルだ
そして今週、もう一つ共感しすぎて胸が痛かったのが、エリーの孤独と葛藤です。
友人には驚かれたりもしますが、私もスコットランド在住中に孤独を感じることがありました。特に、行ってすぐの頃、自分でもびっくりするくらいホームシックになりました。ジョンに申し訳なくて、公園に一人で出かけてベンチに座り、泣いていたこともありました。
学校や仕事など、最初は「所属する場所」がなかったのが大きかったと思います。大学時代のアメリカ留学と違って、自分の「席」が用意されているわけではなかったからです。
言葉の壁も立ちはだかりました。
スコットランド英語が難しくて、ジョンの友達と食事をしても会話について行けず、楽しめなかった。就職面接を5分で終了させられたことだってあった。
スコットランドはエディンバラ。こんなにもあふれる人の中で、ジョン以外には誰一人と「つながり」を感じられず、居場所を見つけられなかった間は、毎日がとてもみじめで、寂しかった。
そんなことを思い出していると、我が家のジョンのことが、ふと心配になりました。
彼は今まさに、高知県日高村という新しい世界で奮闘中。 日本語や土佐弁という言葉の壁はもちろん、日本の商習慣、「阿吽の呼吸」という独特の文化があります。
起業や融資、補助金分野の精度や専門用語は、私だってわからないことばかり。だから、自然とお互いのコミュニケーションの速度や精度も落ちる。そして、イライラが募る。
こうやって、言葉や文化の違いが「トゲ」になって刺さり、気が付くと爆発している(たいてい私の方が先に)。
とまぁ、国際結婚は、キラキラしたロマンチックな面だけではありません。泥臭い歩み寄りと、数えきれないほどの衝突と、「違うんだから、しょうがない」という、前向きな諦めの積み重ねなんだと思います。
「今ならまだやめられる」そう言って何度も、二人で「やる」意思を確認した

マッサンとエリーが最後にはお互いの大切さを再確認したように、私たちも喧嘩の後は、いつも同じ方向を向いています。今のところは。笑
喧嘩ができるのは、本気でぶつかっている証拠。相手とのコミュニケーションを、あきらめていないのだから。
事業計画書という「理屈」と、夫婦の絆という「感情」。その両輪が揃って初めて、日高村に新しい風を吹かせることができる。
喧嘩のたびにそのことを再確認し、腹をくくり直す、社長一年目の私です。
明日も私たちの異文化サバイバルは続く—。
最後に

最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
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最高の一杯を目指して。日高村より。






