ブルワーへの道(これまでの歩み)

こんにちは、BRAVE&BRAWの醸造責任者のジョンです。

以前、私がなぜブルワーになりたいのかについて書きましたが、今回はその夢を実現するために踏んできた具体的なステップについて、もう少し詳しくお話ししたいと思います。

「飲むこと」から始まった学び

私の旅は、一人の「クラフトビールファン」になったことから始まりました。長年バーで働いていたので、ビール自体はかなりの量を飲んできましたが、当時のラインナップはスタイルの多様性に欠けていました。そんな折、2010年頃のスコットランドにクラフトビールブームが到来。多種多様なスタイルが爆発的に増えた景色は、私がまさに待ち望んでいたものでした。

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クラフトビールフェスにて、並んでいた多彩なビールの数々

ファンになってからは、世界中のビールが届くサブスクリプションを利用し、専門誌を読み漁る日々。届いたビールを味わいながら醸造所のこだわりを調べる時間は、私の知識の確かな土台となりました。当時はノートにテイスティング記録をつけ、アロマやフレーバー、そして私が非常に重視する「泡持ち(ヘッド・リテンション)」などを細かくメモしていました。ビアジャッジの資格取得を目指している今、この初心に帰る習慣を大切にしたいと考えています。

自家醸造というステップ

次なるステップは、現在日本では制限されている「自家醸造(ホームブリュー)」です。スコットランドでは、個人消費の範囲内であればビールや蒸留酒造りも完全に合法です。

私は将来プロとして日本へ移住することを決めていたため、趣味のDIYスタイルではなく、あえてプロ仕様の「オールインワン・ブリューキット」を導入しました。ステンレス製の発酵タンクや温度管理用のチラーも揃え、効率よく技術を習得することを目指したのです。自家醸造キットの詳細については、こちらをご覧ください。

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自家醸造の「シングルモルト・シングルホップ(SMaSH)」シリーズから、3種のIPAを。

最初は仕込み日のリズムや衛生管理の基礎を体に叩き込み、慣れてからは地元のビールの「クローンレシピ」に挑戦し、本物と自分のビールを飲み比べて出来栄えを確認しました。やがて自作レシピへ移行し、大好きなオートミールスタウトやスコティッシュ・エクスポートが自宅のタップから注がれた時の喜びは、何物にも代えがたいものでした。

専門教育でのレベルアップ

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修了した大学院の「醸造・蒸留コース」の合格通知書

私はビールと同じくらい、学ぶことが大好きです。知識をさらに深めるため、エディンバラにあるヘリオット・ワット大学の大学院で、微生物学と生化学に焦点を当てた醸造・蒸留コースを受講しました。

理系出身ではありませんが、情熱だけで複雑な概念を理解し、ビール造りを微視的なレベルまで掘り下げて学びました。ブルワーになるために必ずしも学位が必要なわけではありませんが、科学的な基礎知識は、トラブルに直面した際に大きな武器になると信じています。また、Institute of Brewing & Distilling(国際醸造蒸留研究所)にも入会し、常に最新の業界知識に触れるようにしています。

高知県での実践経験

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MUKAI CRAFT BREWINGでの作業、マッシュタンから麦芽粕を掻き出す

日本に移住後、幸運にも高知県仁淀川町のMUKAI CRAFT BREWINGで研修生として受け入れていただきました。1年間、週に2回通い、初めて商業規模の醸造を経験しました。そこで学んだ最も重要なことは、「醸造の仕事の9割は洗浄と衛生管理である」ということでした。

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仁淀川町の豊かな自然に囲まれた、BLUE BREW by MUKAI CRAFT BREWING

ムカイさんからは醸造に関するあらゆるアドバイスをいただき、設備メーカーや原材料サプライヤー、さらには私たちの醸造所を設計してくれる建築家の方とも繋いでいただきました。片道1時間の道のりでしたが、もっと学びたいという一心で、ワクワクしなかった日は一日もありません。

また、研修中にSOUTH HORIZON BREWINGのプレオープンイベントに参加し、ヘッドブルワーの中村さんにお会いしました。驚いたことに、中村さんは私と同じヘリオット・ワット大学の出身だったのです!高知という場所で同窓生に出会えたことは大きな刺激になり、大学の名に恥じぬよう頑張ろうと決意を新たにしました。

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第1回 高知クラフトビール協議会の会合

2023年1月には、第1回「高知クラフトビール協会」の会合にも招待していただきました。まだ何者でもなかった私たちを温かく迎え入れてくれた県内のブルワーの方々と、高知のビールの未来を率直に語り合えたことは、今も私の大きな財産です。

各地の醸造所巡り

地域おこし協力隊として「村に醸造所を造る」というミッションを掲げた3年間で、日本全国約35箇所のブルワリーを訪問しました。現場を訪れることで、限られたスペースを他のブルワーたちがどう活用しているかを肌で感じ、設計上のこだわりを直接伺うことができました。

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各地の醸造所を訪問(Brasserie Knot、West Coast Brewing、Setouchi Beer、Baird Beer)

日本のクラフトビール業界は非常にオープンで、醸造士たちも設備のレイアウトやレシピのアイデアを惜しみなく共有してくださいました。建築家と醸造所を設計する際、予算の制約から何度もプラン変更を余儀なくされましたが、そんな難局を救ってくれたのは先輩方の助意でした。

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各地のビアバーにて(ハレとケ、CRAFT HOUSE KYOTO、Sanity、Golden Garden)

活動の最終年(3年目)には、各地のクラフトビールバーや酒専門店、スコティッシュパブなどを巡り、自分たちのコンセプトを伝えてフィードバックをいただきました。どこへ行っても温かく迎え入れられ、今後直面するであろう課題についても率直に語り合うことができ、解決のための助言もいただくことができました。後に醸造免許の申請において、販売先からの「販売見込証明書」が必要になった際、この時期に築いた「ご縁」が大きな力となったのは言うまでもありません。

品質へのこだわり

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Craft Beer Base Mother Treeでのオフフレーバー・セミナー

2025年6月には、大阪の「Craft Beer Base Mother Tree」で開催された、国際ビアジャッジ谷和さんによるオフフレーバー・セミナーに、咲野と共に参加しました。大学で理論は学びましたが、パンデミックの影響で実技ができなかったため、このセミナーは非常に貴重な経験となりました。

これは単なる復習ではなく、「最高品質のビールを造りたい」という私たちの想いを再確認する機会となりました。これを機に、ビアジャッジの資格取得も視野に入れ、さらなる品質向上を目指しています。

これからの展望

ブルワーへの道は、終わりのない学びの連続です。近いうちに夢を形にしますが、そこが終着点ではありません。道中で経験するであろう失敗さえも、ビールの味わいを深めるエッセンスに変えていきたい。仲間の知識やお客様からのフィードバックを大切にしながら、一杯のグラスに情熱を注ぎ続けます。私の造るビールが、いつか誰かの特別な瞬間を彩ることを願って。

この記事を通じて、私のこれまでの歩みと情熱が少しでも伝われば幸いです。ぜひ、私たちのこれからの挑戦を一緒に見守ってください!

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