「そいつ」は、腹を空かせていた。
密閉された暗闇の中、わずかに残された獲物を求めて、眠りから覚めた小さな「そいつ」。
夏の暑さに浮き足立った「そいつ」が爆食いを始めたとき、幸せを運ぶはずの液体は一変し、ガラスの破片を撒き散らす「爆弾」へと姿を変える――。

こんにちは。
高知県日高村の「醸造所の社長」こと、さきちゃんです。
私たちは今、高知でスコティッシュビール醸造所の立ち上げ真っ最中です(2026年2月現在)。
本連載『聞いてや、マッサン!』では、現在(2025年12月末~)再放送中のドラマ『マッサン』のストーリーを出発点に、今まさに進行している私たちの醸造所づくりの裏側を等身大でお届けします。
第4週のテーマは、「品質管理」。
では、どうぞ。
<人物の呼称について>
マッサン:ドラマ『マッサン』に登場する亀山政春のこと。
エリー:ドラマ『マッサン』に登場する、亀山政春の妻。
第4週『破れ鍋に綴じ蓋』

(あらすじ)
他社のワイン爆発騒動で風評被害を受けた太陽ワイン。マッサンは鴨居商店から安全性の証明を命じられ、実験を繰り返す。そんな折、鴨居から「一緒にウイスキーを作ろう」と誘われ、揺れるマッサン。相談もなく住吉酒造に残るという大事な決断を下したマッサンに対し、エリーは激怒する。
参考:NHKアーカイブス『マッサン』番組内容
『マッサン』で、ワインの瓶が次々と「ボン!」と爆発するシーン。
観ているこっちまで身が縮こまるような衝撃でしたが、実はあれ、醸造の世界では「ボトルボム(Bottle Bomb)」と言うのだそう。
私も初めて聞いた言葉だったので日本語で検索してみたんですが、あまりヒットしません。日本では基本的に自家醸造ができない決まりだし、プロが作るものはちゃんと品質管理がされていてほとんど起きないからでしょうか。
英語で検索すると、自家醸造コミュニティの間では質問箱やYouTubeでヒットします。
今回は、あの爆発の正体と、私たちのビールづくりにおける「品質管理」についてお話しします。
※ビール醸造では、緻密な計算と管理の下「瓶内二次発酵(ボトルコンディショニング/ナチュラルカーボネーション)」を行うことでビールに炭酸を加えるという手法もあります。それについては、別の機会にうちのスコットランド人醸造士の記事で書いてもらうことにします。
「そいつ」が暴れ出すとき
マッサンは、爆発の原因は「残留酵母」だと言いました。この記事の冒頭の「そいつ」です。
つまり、「瓶の中に、まだお腹をすかせた酵母(生き物)が残っていた」ということ。酵母という生き物は、糖分を見つけるとパクパク食べて、代わりにアルコールとガス(二酸化炭素)を出します。

このガスこそが、爆発の犯人。
逃げ場のない瓶の中でガスがどんどん溜まり、さらに夏の暑さで酵母が元気になりすぎてしまった結果、限界を迎えた瓶が耐えきれず、爆発してしまったんです。
実は身近にある「爆発寸前」の食べ物
これ、ワインやビールに限った話ではありません。私たちの身近な発酵食品でも似たようなことが起きています。
待ちに待った手作りのキムチの瓶を開けたとき…👇(動画は英語)
逆輸入されて日本でもファン急増中!コンブチャの瓶を開けるとき…👇
(動画はポーランド語)
開栓の難易度高め!活性にごり酒を開けるとき…👇
活性にごり酒の動画は開け方のコツ含めたくさんあったのですが、これが一番おもしろくて(笑)
知らずに開けると大変なことになりますね!
私たちが「数字」を大切にしたい理由
発酵とは、いわば生き物の力を瓶の中にぎゅうぎゅうと詰め込むこと。一歩間違えれば、おいしい食べ物や飲み物でも爆発の危険があります。
だからビール屋では、単においしい味を作りだすだけでなく、安全な状態でお客さんにお届けすることに細心の注意を払うことが大切です。
そのため、ビールが発酵する過程では何度も「比重(液体の重さ)」を測ります。これによって、糖分がしっかりアルコールに変わったか、酵母がもうこれ以上ガスを出さない「お休み状態」に入ったかを確かめるんです。ビールづくりでは、最も重要な作業の一つです。

文系出身の私は、時々その細かい数字に目が回りそうになりますが、そんなときはあの爆発シーンを思い出さなきゃ、です。
1ミリの妥協も許さない姿勢こそが「プロの覚悟」なんだと思います。
最後に(写真:醸造所の基礎工事)

最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
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Life is more fun if you are BRAVE&BRAW!
最高の一杯を目指して。日高村より。






