《連載》聞いてや、マッサン!#8「酵母。なぜ母という字なのか」

「お姉さん、お酒のお母さんの歌が聞こえてますよ。」

<マッサン第46回、エリーの言葉より>

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こんにちは。

高知県日高村の「醸造所の社長」こと、さきちゃんです。

私たちは今、高知でスコティッシュビール醸造所の立ち上げ真っ最中です(2026年3月現在)。 

本連載『聞いてや、マッサン!』では、現在(2025年12月末~)再放送中のドラマ『マッサン』のストーリーを出発点に、今まさに進行している私たちの醸造所づくりの裏側を等身大でお届けします。 

第8週のテーマは、私たちの「命の誕生」。
と書くと、少し大げさにも見えますが、醸造所ではたくさんの生命が誕生しているんです。

それでは、どうぞ。

第8週『絵に描いた餅』

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画像:NHK ONEより

(あらすじ)
マッサンは実家の酒蔵で職人たちの仕込みの活気に触れ、命を醸す職人の原点に立ち返る。一方、エリーは亀山家の厳しい洗礼を受けながらも、義姉・千加子の出産という尊い「命の誕生」に立ち会い、家族の絆を肌で感じる。
新しい命の輝きを目の当たりにした二人は、自分たちの将来や子供の幸せを想い、一度は安泰な実家を継ぐ道を選ぼうとする。しかし、「職人としての誇り」に触れたマッサンは、ウイスキーという未知の命を育む情熱を再燃させ、再び二人で歩む決意を固める。

出典:NHKアーカイブス『マッサン』番組内容

慌ただしい日々の合間に観ているドラマ『マッサン』。

今週はマッサンの実家が営んでいる酒蔵での酒造りや、マッサンのお姉さんの出産など、命の芽生えを題材にしているように思えました。

「酒母(しゅぼ)」という名の命の源

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出典:Craft Sake World.jp「酒母とは?酵母を育てる日本酒の心臓部を知る」

劇中、エリーが「お酒のお母さんの歌」と表現していた、酒蔵に響く酛摺(もとす)り唄。

酛摺り唄は、日本酒造りの伝統的な工程である「山卸し(やまおろし)」を行う際に歌われる作業唄で、タイマーやメトロノームような役割を果たすのだそうです。

そして、日本酒の世界では、酵母を大量に培養したものを「酒母(しゅぼ)」と呼びぶのだそう。まさに、お酒のお母さんですね。

ビール醸造においても、主役は私たち人間ではなく、目に見えない「酵母」という微生物です。

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この小さな生命体が心地よく活動できるよう、温度を整え、栄養を与え、環境を整える。そのプロセスは、どこか育児や生命の誕生に似ています。

「Yeast」が「酵母」になった日

「酒母」という言葉が登場したところですぐに「酵母」を思い出した私ですが、なぜ日本語で「酵母」と表記されることになったのだろう?そんな疑問が湧いてきたので、調べてみました。

英語のYeastを「酵母」に訳したのは、明治時代の農学者、古在由直(こざい よしなお)博士だと言われています。

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出典:国立国会図書館「近代日本人の肖像」

英語の「Yeast」の語源は、ギリシャ語の「沸騰する」に由来し、発酵の際の「ブクブクと泡立つ現象」に注目した言葉なのだそうです。対して、日本語の「酵母」は「発酵の母」。

明治という新しい時代に、西洋の科学を日本に定着させようとした先人が、この目に見えない小さな存在に「母」という字を当てた感性。そこには、古来から日本人が酒造りに対して抱いてきた、命を慈しみ、育むという精神性が宿っている気がします。

単なる現象ではなく、命の源として捉える

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私たちは日々当たり前のように「酵母」と言っているけれど、自分だったら「母」という字を思いつかないだろうな。

そう思うと、この名付けの素晴らしさに感動さえ覚えます。

醸造所という「母体」を生み出す

第8週では、マッサンのお姉さんの出産シーンも描かれていました。新しい命がこの世に生まれ出る瞬間の、凄まじいエネルギー。

私にとって、今まさに完成を迎えつつある醸造所は、これから新しいビールという命を生み出していくための母体そのものです。

コンクリートの床、ステンレスのタンク、張り巡らされた配管。

一見すると無機質な設備ですが、そこに熱が通り、水が流れ、酵母が棲みつくことで、そこは血の通った「生きている場所」へと変わっていきます。

マッサンが実家の伝統的な酒造りに触れながら、自分の理想とするウイスキー造りへの情熱を再確認したように、私もこの新しい拠点で、どんな個性を育てていこうかと身の引き締まる思いです。

最後に(写真:屋根が付いた醸造所)

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最高の一杯を目指して。
日高村より。

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